こんにちは。
許認可申請と福祉の専門家、平松智実法務事務所の平松智実です。
成年後見制度の理念として
①自己決定の尊重
②ノーマライゼーション
③残存能力の活用
④必要性の原則
⑤補充性の原則
の5つが挙げられています。
今日はこの中から①自己決定の尊重を取り上げてお話していきます。
「自分のことは自分で決める」というのは当たり前のことだと思うかもしれませんが、自分で自分の意思を表示できないという人は多くいます。その代表例が成年後見制度を利用する認知症の高齢者や知的障害のある方です。
後見人(保佐人・補助人)は被後見人(被保佐人・被補助人)が自分のことを自分で決められるように、支援する必要があります。
では、意思表示ができない人の意思決定をどうすれば良いでしょうか。これはとても難しい問題ですが、一つの参考例としてアメリカの学説を紹介します。
意思表示ができない人の意思をどのように決定するかということを4段階に分け1段階目から順次適用していくという方法です。1段階目で決定できなければ2段階目、次は3段階目というように適用していきます。
1段階目:過去に表明された「特定」の指図、願望、希望、現在の意見をもとに判断
・重度の知的障害のある方の場合はこの段階は難しいのではないでしょうか。また、これがわかったとしてもそれが不合理である場合は次の段階に進みます。
2段階目:過去に表明された一般的な発言、言動、価値観、選好をもとに判断
・これも重度の知的障害のある方の場合には難しいと思われます。現在は認知症などにより判断能力が欠如しているが以前は判断能力に問題がなかったというケースが1、2段階目を適用することになります。
3段階目:専門家や被後見人の福祉に十分な関心を持つ者の見解を含む情報をもとに被後見人の利益と負担を比較しつつ被後見人の状況にある合理的な通常人であれば考慮するであろうその他の者にとっての結果をも考慮して判断
・ややこしい表現になっていますが、すごく端的に言えば本人のことをよくわかっている人の見解を踏まえたうえで、普通の人がするであろう判断を本人の意思とするということです。そこに被後見人の周りの人の意向も考慮に入れます。
4段階目:専門家の見解をもとに被後見人の利益と負担を比較して判断
最終的にはこれにより判断することになります。
ここに挙げたのは意思決定についての一つの学説です。不合理な判断を本人の意思としないことについての賛否ながありますが、このような基準も参考になるのではないかと思います。
被後見人の意思をどう判断するかということは、被後見人のQOLに大きな影響を与えます。後見人は本人の意思を引き出す努力、そして過去の被後見人の選好等を把握するために保護者等、今まで支援に関わった人からの情報収集は欠かせません。
意思決定支援は完全な正解がないだけにとても悩ましいですが、とても重大な問題です。後見人の意思決定支援のスキル、知識は必要不可欠な能力ではないでしょうか。
成年後見についてはお気軽にご相談ください。
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