こんにちは。
許認可申請と福祉の専門家、平松智実法務事務所の平松智実です。
成年後見人になるために必要な資格をご存知でしょうか。誤解のないように先に言っておくと、法的にそのような資格は存在しません。成年後見人になるためには何の資格も必要ありませんし家庭裁判所に選任されれば誰でもなることができます。
後見の申し立てをする際に後見人の候補者を指名しないと家庭裁判所が職権で後見人を選ぶことになります。誰でもなれるとは言っても裁判所が電話帳を見てランダムに選ぶわけではないので後見人となっている人にはある偏りがあります。
平成30年の「成年後見関係事件の概況」によると親族が後見人になっているのは全体の約4分の1、その他はいわゆる専門職後見人と呼ばれる弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士などです。さらにその内訳は弁護士、司法書士、行政書士で70%を占め、社会福祉士は17%です。
では後見人となる人に必要な資格ではなく資質とはなんでしょうか。後見人が選任される人は知的障害や認知症などにより財産管理や様々な契約の代理が必要です。もちろん法律の知識があることも重要ですがご本人に福祉的な支援が必要不可欠ではないでしょうか。そう考えると福祉についての福祉の専門家が後見人になっている割合が少ないとは思いませんか。
弁護士や司法書士、行政書士の中にも福祉の知識を持っている人もいるでしょうが(私のように知的障害者施設での勤務経験がああり介護福祉士資格を持っていたり介護支援専門員の資格を持っていたりする人もいますが)その数はごくごく少数でしょう。
法律と福祉のバランスが少し悪いように思えてなりません。
“成年後見士”のような資格が創設され福祉の知識と法律の知識を保証できると良いのかもしれません。
現状の成年後見制度は報酬について、医療行為の承諾についてなど課題が多く残っています。それにより成年後見制度はあまり良くない制度と思われる方がいるのではないかと思いますし、新聞や雑誌、書籍などで成年後見制度を利用するととんでもないことになるといった記述を見ることも少なくありません。
私自身はご本人、そしてご本人の家族のためのとても良い制度だと思いますが、後見人が誰になるかというところに善し悪しのほぼすべてがかかっているような印象です。良くない言い方をすれば当たり外れがあるということです。良い後見人が選任されれば良いがそうでないと、ご本人やご家族に納得のいかない負担がかかりなおかつ原則としてご本人が亡くなるまで後見人に報酬を支払い続ける必要があります。
まずは成年後見制度について正しい知識を持つことが重要です。
今後、制度が変わっていくと思われますので注意しておくと良いのではないでしょうか。
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