おはようございます。
許認可申請と福祉の専門家、平松智実法務事務所の平松智実です。
“こだわり”という言葉を聞いたことがあると思います。どのような意味で使っているでしょうか。
例えば「あの人はワインにこだわりがある」とか「この靴はこだわって選んだ」など良い意味で使われるのではないでしょか。
しかし知的障害支援で“こだわり”と言うと「本の位置にこだわっている」とか「挨拶にこだわっている」などのように使われ“必要以上に固執している”“何回も同じことを繰り返す”というようなニュアンスであまり良い意味では使われません。
実際に自閉症の方などは特にご本人のルールがありそれに従わないと落ち着かないことが少なくありません。一般的に見れば不必要に見えてもご本人にとっては大事なことなのです。
このような状況を見たときに多くの人はそれをすることが好きなのだろうと考えます。しかしそうとも限りません。ある方がコンビニエンスストアは必ずセブンイレブンでないと嫌がるというような場合、この人はセブンイレブンが好きなのであろうと判断するのが自然だと思います。
セブンイレブンのことが好きという可能性もありますが、知的障害支援をする際には別の可能性も考えます。それは、ご本人にセブンイレブン以外の選択肢がないという可能性です。私たちはローソンもファミリーマートもコンビニエンスストアとして認識していますが、この例の方はそのような認識がないという可能性があります。
次のような状況を想像してみてください。
[あなたは目が覚めるとどこだかわからない場所にいます。周りに人はいますが明らかに日本人ではなく話している言葉もまるで理解できないし街中の看板や標識等もまったく何が書いてあるのかわかりません。ポケットに手を入れると見たことのないお金が入っています。お腹を空かせたあなたはご飯が食べられる場所はないかを探すと2つのお店が目に入りました。①赤地に黄色でMと書いてあるお店 ②كافتيرياと書いてあるお店 さてどの看板のお店に入りますか?]
おそらく①のお店はマクドナルドとわかりこちらに入る人が多いのではないでしょうか。それはなぜでしょうか。②のお店がご飯が食べられる場所だとわからない、ご飯が食べられる場所だとしてもどんなものが置いてあるかわからないなど不安なことがたくさんありわざわざそちらのお店には入らないと思います。
これと同じようなことが自閉症の方におきていると考えることもできます。つまり、セブンイレブンが好きなのではなく他のお店がどのようなところかわからないという可能性です。
このように知的障害の方の行動から単純に心中を判断するということは危険であるということが言えます。ご本人の可能性を閉ざしてしまう可能性が大いにあります。
知的障害のある方の後見人に知的障害の知識が必要であるのはご本人の成長や幅広い選択肢を用意するためにも当然のことであると思います。
一つの例であり可能性ですが知的障害のある方を支援する際は多角的に分析することが重要であると考えます。